ペースト状です

たぶん、そういうことです。

反ユダヤ主義という点をいくつも書き出す『精読 アレントの『全体主義の起源』』第二章

 

第二章 ユダヤ人と国民国家

この章は『全体主義の起源』の第一部の内容を解説しています(そしてこのエントリーは解説の解説)

全体主義につながる反ユダヤ主義がどのような流れから生まれてきたのかが書かれています。

 

全体主義につながる素材集めの章です。

結構なボリュームでした。

1エントリー、1章なんていったのが失敗でした。

でもがんばります。

 

反ユダヤ主義につながる要素がいくつあるかというと…

A 民族混合ベルト

B オーストリアの場合

C フランスの場合

D イエズス会

E パナマ事件

F モッブの登場

G 例外ユダヤ人としてのユダヤ

H アメリカの場合

 

8つもあります。反ユダヤ主義の種が多すぎですよね。これを説明しています。結構な量でした。まじで、結構な量でした。駆け足でまとめていきますよ。

 

前提として「お金持ちは嫌われ者になりやすい」

ユダヤ人は土地を持っていないということが一つのアイデンティティです。その代わりに何を持っていたのかというと、お金。有力なユダヤ人は、銀行家として国家と強く結びついていました。また、多くのユダヤ人は商人をしたりして、生計を立てています。それが反ユダヤ主義の前提にあります。

帝国主義の展開とともにユダヤ人の富の重要性は喪失し 、諸国家間の勢力均衡と連帯に依拠しないヨ ーロッパにとって 「非国民的で 、ヨ ーロッパを媒介するユダヤ人分子 ( n o n n a t i o n a l , i n t e r E u r o p e a n J e w i s h e l e m e n t ) 」は 、その無用の富ゆえに憎悪の対象 、その権力の欠如ゆえに軽蔑の対象となる 。(位置485)

そして、お金を持っているよそ者はどうしても嫌われがちになるようです。これが大前提です。

 

A 民族混合ベルトのこと

そうした伝統的なユダヤ人憎悪の温床となっていたのが 、東欧 ・中欧の 「民族混合ベルト地帯 ( 6 ) 」 、とりわけポ ーランドやル ーマニアである ( 7 ) 。 「ここでは 、政府が土地問題を解決して農民解放によって最小限の平等を国民国家に与えることができなかったために 、封建貴族が政治的支配を維持したばかりか中産階級の正常な発展を阻止することに成功した 。(位置543)

政治に無関心なお金持ちが厄介だ。というやつです。ポーランドルーマニアでは商人ユダヤ人が農民の的になりました。

 

B オーストリアの場合

シェーネラーという政治家がオーストリア国家とユダヤ人銀行家の黒い関係に目をつけます。

シェーネラーの反ユダヤ主義は個人的な偏見やユダヤ人憎悪によるものではなく 、オ ーストリア国家とユダヤ人金融業者との結託という政治的経験に基づいていた 。(位置619)

個人的感情ではなくシェーネラーの「正義」からでる反ユダヤ感情です。

 

C フランスの場合

フランスでは、反ユダヤ主義は大成しません。反ユダヤ主義は「ドレフェス事件」というユダヤ人将校のドレフェスさんの冤罪事件によって引き起こされます。が、フランスではシオニズムというユダヤ民族主義も同様に生まれるので、相打ちです。

 

ちなみにドレフェス事件とは

まずドレフュス事件の経緯を簡単に述べておこう 。一八九四年フランス参謀本部ユダヤ人将校ドレフュスはドイツのスパイ容疑で逮捕され 、終身流刑の判決を受ける 。

(略)

ドレフュス擁護の再審請求の高まりと 、軍諜報部員アンリ大佐がドレフュス関係文書を偽造したことを告白して自殺したことを受けて破毀院は調査委員会を設置する 。一八九九年六月破毀院は原判決を破棄し 、八月に再審が開始される 。九月にドレフュスは情状酌量により一〇年の禁固とされ 、数週間後に大統領特赦を受けた 。

(略)

一九〇六年七月に破毀院は原判決を無効としてドレフュスの無罪を認めたが 、ただし破毀院は軍事法廷での再審を要求してそこで無罪を確定する権限をもたなかったため 、事件は法的には終結しないままに終わった ( p p . 8 9 9 0 /一七二 ─一七四頁 ) 。(位置812)

この問題を簡単にいうと、

ユダヤ人将校法のもとでしっかりと無罪となるべきでした。しかし、大赦という形で「法のもと」の判例を作ることができませんでした。ユダヤ人が一人の国民として、無罪になることがうやむやになってしまったのです。

明らかに不当なことに気づいている人もフランスでは多く、反ユダヤ主義に偏りすぎることはありませんでした。

 

D イエズス会

信じているものの違いで、やっぱり対立はおきますよね。以上。

 

E パナマ事件

パナマ運河開設に伴う金融スキャンダルです。ユダヤ人資産家の収賄疑惑を新聞で曝露されました。「ユダヤ人憎し」となるわけです。

 

F モッブの登場

モブキャラの「モブ」です。

強い指導者をもとめる大衆をさします。これが反ユダヤ主義に傾くとけっこうな勢いを持ちます。

 

G 例外ユダヤ人と同化ユダヤ

お金持ちとして失敗をしたユダヤ人をみていた次の世代は、芸術や政治といった分野で成功をしようとします。ディズレイリという人はイングランドで活躍し、インド侵略する計画を成功させます。ユダヤ人らしかぬ帝国主義を展開することに成功する人物です。これまでのユダヤ人をひっくり返す例外ユダヤ人の登場です。例外ユダヤ人は、それまでのユダヤ人像を否定します。

そして、

同化ユダヤ人たちは 、彼らが上流社会に受け入れられるのは自分たちがユダヤ人であるがゆえにであることをよく承知していた 。それゆえ彼らは世間の目から見た普通のユダヤ人 、 「ユダヤ人一般 」との違いを際立たせながら 、なおかつユダヤ人であることを示さねばならない 。そうした行動様式が独特の 「ユダヤ人らしさ ( J e w i s h n e s s ) 」をつくり出していくことになった 。(位置710)

典型的なユダヤ人は社会に認めてもらえるようなユダヤ人像を作っていきます。

 

H アメリカの場合

全体主義が蔓延したヨーロッパとは舞台が違います。しかし、アレント多民族国家として整備されてきているアメリカにも危惧を抱いていました。

近代の人種的関係を困難にするのはこうした平等の観念なのである 。そこでわれわれが扱っているのは 、条件の変化によって目立たなくすることが不可能な自然の相違だからである 。すべての個人を私の平等な同輩だと認めることが要求されるからこそ 、この基本的な平等をお互いに認めたがらない集団間の紛争は著しく残酷な形態を取ることになる 」 ( p . 5 4 /一〇一 ─一〇二頁 ) 。(位置675)

平等はとても大切です。しかし平等が人を強く押し付けはじめると、違いが差別という形で吹き出てきます。昨今の差別もこの延長線にあるでしょう。

 

アレントの立ち位置

アレントは、反ユダヤ主義が生まれてくる過程自体を悪としてみていません。それ自体にも当事者の現実的な問題があることを主張しています。だからこそ、この第一部「反ユダヤ主義」が書かれるのです。

全体主義の起源 』以降のアレントの政治思想は複数の人間によって構成される 「世界 」の経験的な現実性 (リアリティ )に視点をおいて展開されることになるが 、反ユダヤ主義のような自己の存在を否定する敵対者のイデオロギ ーにもそれなりの経験的根拠があることを踏まえているのである 。(位置624)

 

感想

説明不足感もありますが、ここらへんが僕の限界。ヨーロッパで(一部アメリカにおいても)同時多発的に反ユダヤ主義の種が生まれてきます。これが帝国主義と結びついていくと全体主義になるわけですね。

読めば読むほど僕自身のユダヤ人という民族への理解が足りていないし、ヨーロッパの歴史的な経緯を知らなすぎでした。くやしい。