地下鉄サリン事件のこと
先日、麻原彰晃こと松本智津夫死刑囚に死刑が執行されたというニュースが届いて、よくわからないことに一つ幕が下りたのだと感じました。
僕のオウム真理教の思い出といえば、
♩しょーこーしょーこーしょこしょこしょーこー
あーさーはーらーしょーこー
とテレビで報道されていたのが当時小学生ながらなんだか滑稽に映っていました。
ピアノの帰りに迎えにきた母親のウケを狙い、人が何人もいる場所で歌い、がっつり怒られた。
という苦い思い出しかありません。
ほとんど覚えていない小学生の頃の記憶の中でもいまでも鮮明に覚えているセピア色の物語です。
大人に近い年齢になって僕が地下鉄サリン事件を自分なりに知るきっかけになったのは
「何か読む本がないかな」と村上春樹コーナーに立ち寄ったところ、ものっそい厚さの文庫本がありました。
それが『アンダーグラウンド』。地下鉄サリン事件について村上春樹がノンフィクションを書いている?そういえば昔オウム真理教ネタで母ちゃんに怒られたな。気になる。
というきっかけで、この本を読みました。
きっかけは軽いが、中身は重厚。
村上春樹が「はじめに」の中で言っています。
一般マスコミの文脈が、被害者たちを「傷つけられたイノセントな一般市民」というイメージできっちりと固定してしまいたかったからだろう。もっとつっこんで言うなら、被害者たちにリアルな顔がない方が、文脈の展開は楽になるわけだ。そして、「(顔のない)健全な市民」対「顔のある悪党たち」と言う古典的な対比によって、絵はずいぶん作りやすくなる。
p28-29
報道の関係で匿名にされてしまった一人ひとりに本当は物語がある。それも被害者の数だけ。そして事件に対する思いもある。
今回、松本智津夫に死刑が行われたことで、
「何も解明されていないじゃないか」
という声もあるようです。しかし、
本当は何もないのかもしれない。松本も語れることなんてなかったのではないかなと
個人的には思っています。
僕にはこの報道の向こう側にいる被害者の思いを汲むことはできない。一人ひとりに耳を傾けることはできない。それでも想像しようと努力はしますが。
特にまとまりはないのですが、
今回の死刑がなされたという報道によって一つ幕が下りたことは確かです。