全体主義ってなんなの?『精読 アレント『全体主義の起源』』を読む。序章
アレントの『人間の条件』は難しかったです。つぎは『全体主義の起源』を読もう!と思いAmazonを覗くと『全体主義の起源』…値段が高い!全3部構成で1部4800円って、もうね。
参考までに。。。
レビューをみても、翻訳が古く読みづらいと書いています。
ということでまずは入門書を読もうと思います。
下の本。
講談社からでた精読シリーズ。ハンナ・アレントがどんな人物かを合わせて知るにはちょうど良いと思い手に取りました。
僕の読書ジャーナルも兼ねて、本書の序章についてつらつらと書いていきます。
序章:アレントと『全体主義の起源』
「全体主義」という言葉
アレントのいう 「全体主義 」とは 、ファシズムと共産主義を包括する概念ではなく 、それぞれの中から出てくる独特かつ深刻な支配の現象形態を指している 。(位置94)
主義主張ではないということです。「全体主義」という言葉に「主義」があるので、イデオロギーのことかと勘違いしてしまいます。どうやら、現象そのもの。もしくは運動を表しています。「忙しい」とか「しんどい」とかそういうニュアンスなんですね。
アレントの問題意識
アレントが問題にしていたのは 、ナチス支配下の絶滅収容所におけるユダヤ人の 「最終解決 」のような 、人間そのものの破壊にまで行きつく異例の事態であり 、通常の体制や秩序の安定というような合理的 、功利主義的な論理 、あるいは軍事支配や警察支配の論理を明らかに踏み越えた現象であった 。(位置106)
アレントはその異常な現象を問題としていたようです。これが、ナチス支配下のティーパーティーだったら、異常性もなく何も問題とすることはなかったのですよね。
人間が人間の尊厳を踏みにじる時に、問題が起こります。
起源という言葉
全体主義の 「起源 」を扱っているのではなく 、全体主義へと結晶していった諸要素を歴史的に説明しようとしているのである 。(位置158)
この文から、歴史的な検証というよりも吟味という言葉の方がしっくりくるということだと理解しました。どうしてナチスの台頭が起こったのか、それ自体を要素を洗い出して分析するような。
「結晶」という言葉の難しさ
ここでアレントは 「結晶 」という言葉を 、法則的な必然性とは異なり 、政治的その他の事情 、関係する行為者たちのあり方によっては別様でありうるという選択可能性の意味を込めて用いているが 、いずれにせよそこで意図されているのは 、やはり歴史的な因果関連の探究なのである ( 1 1 ) 。(位置179)
この「結晶」という言葉が難しい。大切なのは選択可能性があるということ。明らかにナチスの台頭は許されるべきことではなかった。そして、それはどこかで舵取りを間違えてしまったんだよ、ということをアレントは「結晶」という言葉で表しているようです。
感想
序章では「全体主義の起源」とアレントの問題意識をしっかりと打ち出してくれています。これなら読みやすい。
読んでいて思うのは、これって平気でブラック企業とかでも起こることなんじゃないでしょうか。
「ブラック企業の労働の搾取の検討」
ブラック企業が行き過ぎたやり方によって、長時間労働や無理な働かせ方を労働者に要求している。労働者としての権利、ひいては人権問題にまで発展することがあり、社会的問題として認識するべきだ。
本書では、ブラック企業が「ブラック企業的振る舞い」をするようになったポイントについて検討をしていく。
みたいな。もちろんナチスのようなものとは規模が違えども、こういった全体主義的発想は身近に潜んでいるような気がしています。
今回は序章だけです。明日は、第一章。毎日一章ずつ感想を書いていきますね。